2012年11月

2012年11月29日

パリキッチン通信 スペシャリテって難しい

 パリキッチンにはじめていらっしゃるお客様のほとんどが口にする「ここのおすすめはどれですか?」。惣菜屋を始めて間もない頃はこれについてはけっこう真剣に悩んでて「キッシュもおすすめですし、今日はムール貝なんかもありますよ。」なんてやってたんだけど、そのうちにめんどくさくなってきて「どれも美味しいですよー。」などと厚かましいことを言うようになってしまった。さすがにこれじゃあまりにも不親切だなということで今ではお客様のお好みやあわせるワインを伺ってそれに合うものをおすすめすることにしている。でもやっぱり自分でお店を開いてるからには「スペシャリテのひとつやふたつはつくっとかないと」という強い想いがあるんだけどこれがなかなか難しい。

 スペシャリテの定義とはなにか?いろんな約束事があるんだろうけど、ありていに言って「このお店でしが食べれないもの」だと僕は思っている。以前よくお邪魔していたてんぷら屋さんでいつも〆に注文していた穴子丼。生きている小ぶりの穴子を目の前で手際よくさばき衣をつけて揚げる、つゆを少し温める、揚がった穴子を箸でふたつに割りつゆにさっとくぐらせごはんをよそったどんぶりに盛り付ける。お品書きとしては「穴子丼」なんだけど「ここの穴子丼」は他では食べることのできない特別なものだった。ご主人だってウチのがいちばん旨いよ、と言ってた。つまりはスペシャリテだった。でもこの「何も足さない。何も引かない。」穴子丼は看板料理としては地味だし、地味なわりには値段だって安くはない。そして僕が見た限りでは僕以外にこの穴子丼を注文しているお客はいなかった。

 何が言いたいかというとひとくちにスペシャリテといっても意外と地味なものも多いんです、ということ。大昔ならともかくヌーベルキュイジーヌの洗礼を受けた偉大なシェフたちが30年以上も切磋琢磨してつくりあげた現代のフランス料理において、そして世界中の情報がリアルタイムに手に入るこのご時勢にいまさら新しいネタなんて出てくるわけがないじゃないですか。そんなわけで分解と再構築とか難しいことを考えるのはやめにして、もうすでに定番となっている料理を僕なりに洗練させ完成度を高めることが最善の道のりなのだろうと考えている。ひとことで言うと原点回帰ですね。手垢のついたスタンダード「枯葉」に新しい響きを与えたマイルズデイビスのように僕だけの語り口を手に入れることができればサイコーだなと思いながら仕事をしています。すごく厚かましい喩えで恐縮ですけど。

cepe at 23:01|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2012年11月20日

パリキッチン通信

 フェイスブックを始めて「ねたがかぶってもなあ」というのもあって更新をサボりがちでしたが、なんとなく料理のはなしじゃない料理のことを書いてみようと思い立ちこちらのブログも地味に再開することにしました。フェイスブックのほうは登録しなくても見ることができるのでよかったら上のアドレスからご覧になってください。というわけで初回というわけでもないけど最初はなんで僕が料理をはじめることになったかというお話。

 何度かお店に足を運んでくださるうちに世間話をする程度に親しくしてくださるお客様が何人かいらっしゃる。もちろん最初は料理やワインの話なんだけど、やはりというかごく自然な流れでほとんどのお客様が口にするのが「で、なんでフランス料理やろ思たん?」のひとこと。悪気はないのはわかってるんだけどこれだけはいつも困ってしまう。

 たとえば祖母の誕生日会はいつもプラザのダイニングでそのときテーブルに挨拶に来たランボーさんに「君は将来いい料理人になれるよ」と言って貰ったなんていうエピソードがあれば完璧なんだけど、残念ながらうちは祖母の誕生日会にル ランデブーで食事するようなお家柄ではなかったし僕自身も大人になってから伺おうと思っていたところにプラザホテル自体閉館してしまった。あるいは実家が旅館で〜みたいな血統があれば有無を言わせずすべての人が納得するんだろうけどそれもない。高校生の時に同級生がデートでフランス料理店に行って3000円のコース料理を注文したという話を聞いて「フランス料理って高いんやねー。」ってびっくりしてたくらいなのでむしろフランス料理とは関係ない場所で20年あまりを過ごしてきたんだと思う。なにせきちんとしたフランス料理をはじめて食べたのは専門学校を卒業した後のことでしたからね。

 そんなわけでいつもその質問をされたときに思い出したきっかけらしきストーリーをでっちあげることにしている。でっちあげるとは言っても、もちろん嘘は言わないしその時々で突然思い出すもの(テレビ番組の料理の鉄人が流行ってたとか)もなかにはあるのだ。いまのところいちばんのお気に入りは僕が20歳のときにアルバイトしていたレストランのコックがいつも言ってた「荷物持つか包丁持つかしかなかったんや。」というもの。これもあながち嘘ではなく僕も当時は似たような状況だったわけでまあパクリで申し訳ないけれどこれをそのままつかっている。

 でもほんとうはたいした理由なんてなくてなんとなく「いっちょやってみようか。」と思ったというのが僕のいちばん正直な答えです。誰も納得してくれそうにないのでこれはいちども言ったことはないけど。

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2012年11月02日

ひさしぶりのパリキッチン通信

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やーみなさんお元気ですか?
前回の更新からひと月以上開いてしまいましたがクリスマスとお正月の献立が決まりました
クリスマスは去年と同じくローストチキンと前菜の取り合わせをメインにしたのですが
前菜の取り合わせは去年とはがらりと内容を変えています
ひさしぶりにスープ ド ポワソン(魚介のスープ)をつくりたいなーと考えていたので
これに鴨のリエットと赤ワインのリゾットでつくったコロッケと茸のピクルスを組み合わせることにしました

お正月料理の取り合わせも今回は2人分と4人分を異なる内容でご用意
なんといってもお隣が上等なお肉屋さんなので宮崎産和牛でつくったローストビーフをメインに
これまでのスペシャリテのから冬仕様のものをチョイスしたかんじにしています
イベリコ豚も最上のクラスのものが手に入るようになったのでキッシュのねたにつかいます

詳しくはこちらをご覧ください  →→→

あ、もちろんシュトーレンも焼きますよ!

cepe at 23:07|PermalinkComments(0)TrackBack(0)